本質的な価値が理解できなかった20代
上の動画は、皆さんも一度はご覧になられたことがあるのではないだろうか?これは2014年から放送された「好きなことで、生きていく」がキャッチコピーのYouTubeのテレビ広告である。「好きなこと」を動画でシェアすれば、ファンが集まり、人が集まればGoogleにスポンサー(広告主)が付き、Google に入る広告収入をクリエイターに分配することで報酬が得られる。それで「生きていけるよ」、ということだったのだろう。
仕組みは理解できるが、果たしてどのぐらいの人がそれを実現出来ているのだろうか?仮に、今サラリーマンをしている人たち(労働力人口:6676万人)が全員YouTuberになったとしたら、皆が会社から得ている給与分を稼ぐことは可能なのだろうか?
労働力調査(基本集計)2020年(令和2年)平均結果の要約
https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/ft/pdf/index1.pdf
いくら「好きなこと」だったとしても、それが視聴者に対して価値のあるものでなければ人は集まらない。そしてそれはマーケットサイズ、希少性、需給のバランス、などを考慮する必要がある資本主義の単純な原理原則からは逃れられない。
このCMが流れていた当時、僕は28歳でシンガポールで働いていた。20代で海外勤務(時代の最先端シンガポール!)、外資系企業、若くして大きなプロジェクトも任せられ、さらには将来を担うリーダーなんてときたま呼ばれたこともあったりして、少し図に乗っていた。ただ今思えば、その姿は単なる社畜で、人生のすべてを仕事優先、友達との予定は何度もドタキャン、プライベートを犠牲にして深夜までオフィスで夜な夜なパソコンと向き合っていたツケは大きく、恋愛も友達も次第に自分からは離れていった。
そんな僕にこのCMは当然全く刺さらなかった。興味すら持たなかった。当時のYouTubeといえば、海外生活で見れなくなった日本のテレビが少し見れるぐらいの感覚で、それ以上のものではなかった。さらに需給のバランスがとか理屈で色々と考えてしまったせいで、完全に乗り遅れて先行者利益を享受する機会を逃してしまった。
YouTubeというビジネスがここまで成長し、さらには先行者YouTuberたちがそれだけで財を成し、それだけで生きていく人たちが出現するなんて検討もつかなかった。
働き方改革が徐々に変えた世界
さらに、そうこうしているうちにこの4年後に働き方改革関連法が成立することとなる。これは、労働関係法を新たに改正する法律で、社畜のように毎日働いていた僕には、これも懐疑的だった。仕事量は変わらないのに、労働時間が減る。仮に、日本のサラリーマンの平均労働時間を3時間削減しなければならないとなると、仕事量を減らすか、生産性を上げるか、外国人労働者や移民、もしくは中学生から働かせる等により日本全体の労働力を増やすかをしなければならない。
しかし、そんな単純な計算はそっちのけで、着実に変化していった。僕が務める会社でも、金曜日の夕方に「月曜日の朝までに」とブラック企業さながらにお願いされていた仕事は徐々になくなり、「残業」は禁止、「メンタルヘルス」は大事だ、と急にホワイト企業になるのを急いだ。労働時間はシステムで厳格に管理され、月間通算40時間、60時間のそれぞれ超えたら自動的に上司にメールで報告がいき、90時間を超えた場合はルールを守らなかったと人事記録に残り、それを6回繰り返した場合には懲戒解雇処分と厳しすぎる罰が待っていた。もちろん当時月間170時間の残業をしていた僕には、この変更を柔軟に受け入れるのは難しく、また先輩や上司の世代も同じだったようで、会社のパソコンを自宅に持って帰って仕事の続きをしていた。なぜなら労働時間はオフィスのゲートの入退室管理を使用していただけであって、その他は自己申告だったからだ。急に仕事は無くならないし、なんせ責任感があった。
とはいえ、徐々に働き方改革の効果は表れ始め、「人生100年時代」という書籍も出版されるなど、社会全体が「働き方」や「生き方」を改める考えるようになる機会を提供してくれたことは言うまでもない。
でも実はこの考え方は、日本よりもずっと先に海外(特に欧米)では当たり前になっていて、「ワークライフバランス」などと呼ばれていた。仕事だけではなく、プライベート、家族との時間を大切に、というのがトレンドになっていた。「ワーク」と「ライフ」のバランスが整ってきたら、今度は「幸せ」とは何だろう?とみんな思い始めていた。そして行きついたのが日本の「生き甲斐」という考え方である。海外の人からしたら家族、恋愛、友情を犠牲にしてまで仕事に邁進する日本人は摩訶不思議な存在だった。でもこの「生き甲斐」が、世界一長寿国を支える考え方なのか、と。みんな秘密を暴いた気になって舞い上がった。
外国人が感銘を受けている日本人が大事にする生き甲斐
では、生き甲斐(ikigai)とは一体何なのだろうか?
著者によればそれは、#1「好きなこと」、#2「得意なこと」、#3「お金になること」、#4「世界が求めるもの」が重なる領域のことらしい。そして、これがあるから日本人は長寿だ、と。でもどれほどの日本人がこれを聞いて「確かに僕には生き甲斐がある!」と胸を張って言えるだろうか?

実際は、2つもしくは3つの領域が重なるだけじゃないだろうか?
2つが重なる領域とは?
- 「好きなこと」×「得意なこと」=「情熱」
- 「得意なこと」×「お金になること」=「専門性」
- 「お金になること」×「世界が求めるもの」=「天職」
- 「好きなこと」×「世界が求めるもの」=「使命」
僕の場合は、太字で記した「天職」は得られている気がする。一応サラリーマンとしての収入はあるし、世界が求めているものだから会社も存続している。
3つが重なる領域とは?
- A =「世界が求めるもの」×「好きなこと」×「得意なこと」=喜びと充実はあるが経済的に豊かとは言えない
- B =「好きなこと」×「得意なこと」×「お金になること」= 不満はなく満足だがどこか無益な感じ
- C =「得意なこと」×「お金になること」× 「世界が求めるもの」= 心地良いが空虚
- D =「お金になること」×「世界が求めるもの」×「好きなこと」= 高揚と豊かな満足感。これで良いのか?疑心暗鬼な部分あり
もしくは、上の太字で記した3つが重なる領域を満たしているかもしれない。そう、まさに「心地良いが空虚」の状態だ。
本題に戻ろう。
まずは、「好きなこと」を探す旅
社会人として8年経っても好きなことを見つけられていないことを考えると、僕はあまり好きなことを見つけるのが上手じゃないのかも知れない。初っ端から出鼻を挫かれた気分だったが、そんなときに友人から面白いサービスがあることを耳にする。
それは、六本木の青山ブックセンター跡地に出来た「文化を喫する、入場料のある本屋」文喫が提供している「選書サービス」だ。
https://bunkitsu.jp/
少し古いアプローチかも知れないが、好きなことを発見する旅を本でしたいと思った。何故なら今までのやり方の延長ではいけないわけだから。
「好きなことで、生きていく」には?
未希 諒
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